人生をともにする物語
第三回 入学式のお祝い

春のある日、私もよく知っている息子の幼馴染が有馬グランドホテルにお見えになりました。その日はおじい様とおばあ様とご一緒で、小学校卒業のお祝いでご予約くださったと聞いていました。何かお祝いがしたい。彼が人と接するのが少し苦手なことを知っていた私は、真っ白な扇子に筆で「卒業おめでとう」とメッセージを記し、お部屋に置いておきました。

後日、彼のお母様からご連絡をいただきました。彼は私たちが贈ったプレゼントに感動し、その場で写真を撮ってお母様にLINEを送られたそうです。メッセージに書かれていたのは「お母さん、僕、将来こんな風に人を喜ばせることができるホテルマンの仕事がしたい！」という言葉。聞けば、彼はお家でも感情を表に出したり、意思表示をすることが少ないそう。お母様からは「息子から将来の夢を聞いたのははじめてです。素敵なサービスを本当にありがとうございました」と御礼の言葉をいただきました。
お客様に喜んでいただきたいという私たちの想いは、ホテルにいらっしゃらなかったご家族にも届く。私たちは、ここにいらっしゃらないお客様をも笑顔にすることができるのだと実感し、あらためてこの仕事を誇りに感じることができました。

ここで働くことへの責任と誇りを胸に、かけがえのない一日をより、豊かに過ごしていただけるよう、これからも心を尽くして皆様をお迎えします。