美を紡ぐ調度品 第四回
雅中庵 お雛飾り

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ご宿泊いただくたびに、新しい発見がある。お客様の一期一会の日々を大切にするために、常に新しい表情でお迎えしたいと考えています。館内の調度品においても有馬にゆかりのあるものをモチーフにオーダーメイド。細部にいたるこだわりも、私たちが考えるおもてなしのひとつです。

古き良き日本の美を映す
雛飾り

茶の湯のこころを大切にする有馬グランドホテル。敷地内には数寄屋建築の茶室「雅中庵」があり、おうすとともに四季の風情を心ゆくまでお楽しみいただくことができます。

茶室のしつらえで季節感を表現する茶道の世界。雅中庵では桃の節句の時期になると雛人形を飾り、お客様をお迎えすることが毎年の恒例となっています。これは神戸御影の名家「川西家」より譲り受けたものです。つくられたのは、江戸時代から明治に移り変わる頃。当時、関西では雛飾りと一緒に精巧に細工された台所道具のミニチュアを飾る風習がありました。川西家のそれにも、羽釜、おひつ、ふいごといった、当時の暮らしを垣間見ることができる道具が並びます。

雅中庵に飾られるようになったのは、今から三〇年ほど前のこと。桃の節句を飾るしつらえを模索する中で巡り会いました。現代雛とはまた違う格調高い気品。それは茶室の風情ともこの上なく相性が良く、まるでここに飾られることが宿命づけられているかのようでした。現代ではあまり見られなくなった豪華な段飾り。職人による細工が光る台所道具。厳かな佇まいの中にも遊び心を感じさせる装飾の数々。古の名工によって生命を吹き込まれた雛飾りは、一五〇年以上の時を経た今も、春の訪れを告げる風物詩として人々の心を魅了し続けています。

雅中庵では、毎年二月の初旬から三月末の約二ヶ月間にわたって雛飾りの展示を行っています。 期間中にお越しの際は、ぜひとも雅中庵へお立ち寄りください。